三井のオフィスの取り組み COLORFUL WORK PROJECT 三井不動産
千疋屋総本店
社長
大島博さん

古くから日本橋の地を守って来た福徳神社。信頼のおける方に宮司をお願いしたいと、真木さんをお招きすることになりました。非常に温かく、穏やかな方です。

福徳神社
宮司
真木千明さん

日本橋が誇る中央通りの高層ビルの間に、ちらりと見える赤い鳥居。誘われるように路地に入ると、若木が茂る森の中に真新しいお社が現れます。それが、福徳神社。参拝客は、老若男女、外国人も含めて、ひっきりなし。“福徳の森”と名付けられた周囲の広場にもベンチやパラソルの下に、仕事の休憩時間や買い物の小休止で、たくさんの人が集います。今回の“日本橋人”は、福徳神社の宮司を務める、真木千明さんです。宮司とは神社の最高責任者のこと。神職の威厳ある袴姿とは対照的な、やさしい笑顔と楽しい語り口で、神社の歴史や、いまの日本橋の風景について色々とお話ししていただきました。

社殿は新しいですが、実は、とても古い神社です。
街の発展に伴い、形を変えながら、いまに至ります。

−福徳神社の歴史について改めて教えてください。

歴史的には本当に古いんですよ。1000年以上も前からあったとされ、江戸が開かれたときに将軍様から330坪という境内地をいただきました。ところが、100年もたたないうちに30坪になってしまった。あっという間に日本橋が商いの街として発達したものですから、神社の境内地がどんどん商業地に変わっていきました。

2014年10月に日本橋再開発計画とともに再興し、おかげさまで毎日たくさんの方がご参拝にいらっしゃいます。その中でも70、80代の年配の方々から、よくこんな質問をされます。「この神社、新しいんですか?」って。建物は新しいですけど、歴史はとっても古いですよ、とお伝えすると、決まって「え?」と驚かれるんです。
以前はこの場所に2階建てのビルがあって、その屋上に、いま社殿の中にお納めしている社があったんですよ、と言うと、みなさん口をそろえて「知らなかった」とおっしゃいますね。
そういう方々は昔、日本橋にお勤めしていた人たちが多い。マスメディアなどで日本橋の再開発を知り、久しぶりに訪れて初めて福徳神社を知ったわけです。30年、40年、日本橋で働いていた人たちさえも知らなかった。本当に忘れられていた神社だったんですね。

−宮司さんのお仕事について教えてください。

朝は掃除から始まります。社殿の拭き掃除、いわゆる雑巾がけですね。参道は高圧洗浄機でシャ―ッと(笑)。
朝7時には来るようにしています。そのころにはカラコロカラコロとお参りの鈴が鳴り始めますから。「おはようございます。早いですね」と声をかけると、ほとんどがこのあたりの会社で働く方々なんです。「朝の方が、仕事がはかどるんですよ」と口々におっしゃいます。例えば7時ごろに出社して9時の始業まで仕事するなんて具合で。

この時期には境内に夏の大祓いの「茅の輪」を置いていますが、あれも私の手作り。輪をくぐることで罪やけがれを取り除き、心身が清らかになるようにお祈りするものです。お守りの絵柄を決めるときにもいろいろ提案しました。福徳神社は別名「芽吹稲荷」。すべてのお守りにクヌギの芽吹きをデザインしたり、恋愛成就の恋守りはハートマークの大きさを変えて動きを出したり。また、福徳神社は江戸時代に富くじを販売していた歴史があります。現代で言う、宝くじですね。そのせいか、宝くじのパワースポットとも言われています。お守りやお札に加えて、宝くじを入れておく「宝袋」もお授けしていますが、宝袋の内側には宝船を描いています。

日本を代表するオフィス街、商業地の神社として
働く人、訪れる人にとっての氏神様でありたい

※「この辺りは緑が少ないので、皆さんの憩いの場になっているようです」と真木さん。

−これから神社のあり方について、どのように考えていますか。

本来、氏神とは自分が住んでいる地域の神様のことを言います。でも、現代は会社で過ごす時間が長いですよね。私はこのあたりで働くオフィスワーカーの方々に福徳神社を今様の氏神様だと思ってご参拝、ご祈祷に来ていただけたらと思っております。
毎年、周辺企業の新年の祈願が1月4、5日にありますが、社員個人でご祈祷にいらっしゃる方もちらほらと増えてきています。また、買い物帰りに「とってもいい雰囲気の神社なんで」とご祈願のお願いに来てくださる方もいますね。

※特別に真木さんに茅の輪くぐりをして頂いた様子(左)と販売中のお守りの一部(右)。

そうそう、もうひとつ、この神社の特徴があります。福徳神社は夜、ライトアップされています。神社仏閣の夜は本来、暗くて恐いですが、福徳神社は「明るい、安心、安全」。トリプルAです(笑)。
朝、昼、夜。いろいろな理由で、いろいろな思いを持った人たちが集う場所。それがいまの、そしてこれからの福徳神社なのだと思います。

※この情報は2017年7月現在のものです。