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和牛すき焼き 伊勢重
6代目社長
宮本重樹さん

天ぷらの名店“てん茂”さんの4代目 奥田秀助さん。何事にも正面から向き合い、数多くの信頼を得て、業界また地域の中で大活躍をしておられます。

てん茂
4代目
奥田秀助さん

オフィスビルが並ぶ江戸通りの角から路地へ。ほどなくして、まるで映画のセットのような味わいのある店構えが見えてきます。ちょっとタイムスリップしたような気分でお店に近づくと、今度は鼻が反応。濃厚な胡麻油の香りが漂ってきます。江戸前てんぷらの名店「てん茂」は戦争や火事で被災しながらも、この場所でお店を営んで100年以上。白衣に蝶ネクタイの姿が素敵な4代目奥田秀助さんにお話をうかがいました。

昔ながらの胡麻油で揚げるのが“てん茂の味”。
時代が変わっても、これだけは変わらない

ー子どものころに見ていた日本橋はどのような風景でしたか。

生まれも育ちも日本橋で、現在も店の2階に住まいがあります。
わたしが小さいころは、このあたりはほとんどが戸建てで、同級生たちもたくさん住んでいました。車もそんなに走っていませんでしたから、店の前で兄とキャッチボールをして遊んでいました。

当時はそれぞれの家々から子どもたちが学校や遊びに出かけるようなのんびりした風景がありましたが、だんだんと開発が進み、すっかりオフィスビルやマンションが多くなってしまいましたね。

ー家業を継ぐことを意識したのはいつごろでしたか。

中学を卒業するぐらいから家業に興味を持ち始め、高校を出るときには「継ぎたい」と明確に思っていました。営業中に祖父や父が働く姿を見ることはできませんでしたが、祖父からは「食べものは大事にしなきゃいけないよ」と小さいころから言われていたのを覚えています。

大学を卒業し、2年間の会社勤めを経て、店に入りました。
父や職人さんの仕事を見ながら、教わりながら少しずつ覚えていきました。特に厳しいという感じではなく、ここはこうしたらいいよ、と言葉でしっかり伝えてくれました。中でもよく言われたのが、「音をよく聞きなさい」。てんぷらを揚げる上で難しいのが、温度。温度や揚がり具合を“音”で見極めます。

そして、もっとも大事なのが、仕入れ。「お客様の代わりに仕入れをする気持ちで品物を選びなさい」と教わりました。

ー「てん茂」ならではの特長やこだわりを教えてください。

創業以来変わらない昔ながらの胡麻油でてんぷらを揚げています。白胡麻を炒ってからしぼった油で、熱に強く、酸化しにくい油です。胡麻の風味がしっかりとあって、油切れもいいですね。

てんぷらの衣をつくるときは、太い箸を使います。いまの箸は角材で父が手づくりしたものです。衣自体に粘りが出るとからっと揚がらないので、衣は粘りが出ないようにします。細い箸で小麦粉と水をまぜると回数が多くなり、どうしても粘りがでてしまいます。太い箸でまぜたほうが、回数が少なくてもまざるので粘りが出にくいんです。

また、てんぷらの衣をつくる特大の粉鉢は赤膚(あかはだ)焼き。奈良の西大寺で行われる「大茶盛」で使われているものと同じです。粉鉢は火のすぐそばに置きますが、陶器は熱を通しにくいので理に適っているんです。
実は、祖父の時代に火事で店が焼けてしまったことがあり、道具を一から揃えなければならなくなりました。モノがない時代でしたが、祖父がどこかで見つけてきたのが、赤膚焼きでした。数年後、百貨店の奈良の物産展に来ていた赤膚焼きの先生に、祖父が「うちでも使っています」と伝えると先生が店に来てくれました。すると、「それは出来に満足がいかないもので本来は壊してしまうはずの皿だった。ちゃんとした皿を焼かせてほしい」と申し出てくれたそうで、この粉鉢も50年ぐらい使っています。
今は他のお皿も、奈良の赤膚焼きを使っています。

ーてんぷらのコースには季節ごとに“名物”があると伺いました。

それを楽しみにいらっしゃるお客さまも多いですね。
夏は(5月の連休明けから9月の半ばまで)千葉の外房の鮑を使います。祖父の代から続くメニューです。そして、秋になると「栗」。外の硬い皮を取り、渋皮をつけた状態で揚げます。破裂しないように2つに切って、生からじっくり時間をかけて揚げる「渋皮揚げ」は父が始めたものです。生の栗を揚げるのでホクホクした食感になって喜んでいただいております。

糖質制限のコースや江戸野菜のてんぷらなど、
新しい試みにも積極的に取り組んでいきたいです。

ー新しい試みをされているそうですね。

日本橋の料飲組合のみんなで今年から取り組み始めたのが「糖質オフ」プロジェクトです。糖尿病専門医の山田悟先生から指導を受け、糖尿病の方でも食べられるてんぷらのメニューを考案しました。もともと、胡麻油自体は非常に身体にいいのですが、課題は小麦粉でした。最終的に、衣に使う小麦粉の量を三分の二まで抑えることに成功しました。

糖尿病の方がご家族やお友だちと一緒に食事ができる場を提供できたことにやりがいを感じました。今後も、街ぐるみで進めていければ、もっともっと日本橋に興味を持って訪れていただけるのではないかと思っています。それがきっかけで好きになってもらえたら嬉しいです。できるだけ継続していきたいですね。

それから、最近は野菜を揚げることが多くなってきました。実は、もともとてんぷらと言えば魚介類を揚げたものを指し、野菜は精進揚げというまったくの別物だったんですよ。 老舗料理店の大旦那さんの薦めもあって、「江戸野菜」を積極的に使うようにしています。てんぷらには「寺島なす」「品川かぶ」「東京うど」、ぬかづけには「半白きゅうり」など。手に入ったときには通常の野菜に替えてコースの中でお出ししています。お客さまが江戸野菜を知るきっかけにもなってくれています。

新しいことにも少しずつ挑戦しながら、日本橋の地で4代続くお店としてこれからもみなさまに喜んでいただけるように “てん茂の味”をご提供していきたいです。

※先代と一緒に。蝶ネクタイがお似合いのお二人(左)と、店内の様子(右)

−最後に、お休みのときのリラックス法はありますか?

学生時代からずっとテニスをやっていました。最近は忙しくてプレイはしていないですが、大学のリーグ戦があれば応援にいきます。大学の同期で集まって年に1、2度食事したりして、いまだに仲良く付き合っています。

あとは、おいしいものを食べることです。日本橋界隈にはお寿司や鰻、フレンチなど、いいお店がたくさんありますから、時間が取れたときは食べに出かけます。でも、みんな同じ時間帯で営業しているのでなかなか行けないのが残念です (笑)。

※この情報は2018年8月現在のものです。