三井のオフィスの取り組み COLORFUL WORK PROJECT 三井不動産

日本橋三井タワーの福耳小話 vol.02

数多の技と道具を経て、花咲く鱧に

櫻川 東山 仁美さん

真っ白い身が楚々たる風情の鱧料理。
しかし、調理前の一本釣り活鱧の姿はまるで違う。強い生命力で水無しでも生き長らえ鋭い歯で咬みつくこともあると威勢よし。旬の盛りを迎えて脂ののった肌はぬらりと輝き体は小骨だらけ。

この鱧の仕立てが凄い。全長約1mの巨体を余裕で受け止める横幅の長〜い専用まな板に寝かせてヌルつく体を目打ちでしっかり固定。歌舞伎の引抜きのように、あれよあれよと様変わりする鱧はあっという間に骨抜きにされ、「姿は白牡丹、食感は綿菓子、さすが櫻川の湯引き」に変貌を遂げる。

滑らかに動くヒレの骨は複雑に噛み合い包丁を阻むが刃先から伝わる感触ひとつで切り進む熟練技に迷いなし。薄皮一枚残して包丁を入れ骨切りした身を湯に潜らせるとくるんと反り返ってふっくらと花が咲く。

海の無い京都で瀬戸内海から生きたまま運べる夏唯一の魚として古くから珍重されてきた鱧。手のかかる魚に挑んだ先人の知恵と苦労に思いを馳せつつ、あっさり美味しくいただきたい。

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