グルメハンバーガーの先駆け店「ザ・ビートダイナー」。日比谷の高架下で賑わった前身の店は高架の改修工事に伴い姿を消したが、ファンの想いが功を奏じて日本橋で蘇った。

看板バーガーの命のバンズは一枚の絵から誕生した曰くを持つ。スタッフが意中のパン屋に理想のイメージを伝えるべく描いた≪BBQを楽しむ家族の風景≫を体現する特注バンズはフカッと歯を押し返す元気な弾力が真骨頂。二つに割って表裏あわせ6分半、鉄板でじっくり焼いて甘味を引き出す。その間、並行してパティやオニオンを焼き上げ、パティを裏返す頃合いでポテトを油に落とし、パティから湧き出した肉汁をバンズに軽く染ます小技もはさむ。ふんだんの具材を見栄えよく“若干斜め”に積み重ねて完成だ。

技と勘、センスをフル稼働して挑むこの一連の仕事をピーク時は独りで最大8個同時進行。習得には8ヵ月を費やす。注文から約7分後。ぶ厚いバーガーをグワシと掴んで齧ると、粗挽きパティから溢れ出す香ばしい肉汁が口一杯に広がり、後を追う種々の具材のカラフルな食感とバランスのいい五味が調和して最後まで飽きさせない。ファストフードの何倍もの待ち時間には美味しさの理由が凝縮されている。