食材を通じて東北の思いを繋いできた「わたす日本橋」
11周年を迎え、さらなるステージへ
2026.03 逸品
[左]初代総料理長 梁島さん [中央]現総料理長 森田さん [右]店舗責任者 畑中さん
東北の情報発信拠点として、「わたす日本橋」が開設されたのは2015年の3月のこと。2021年に移転があり、現在は日本橋三井タワーの2階にて、様々な取り組みを行なっています。なかでも、好評を博しているのが飲食スペースの「わたす
ダイニング&バル」です。食材のポテンシャルを引き出したメニューは、「素敵な料理になって嬉しい」と生産者の皆さんの力にもなっています。そこで今回は「わたす日本橋」における企画に携わる三井不動産の飯塚
祐美さん、有松 大輔さん、および初代総料理長の梁島 真吾さん、フレンチ出身の現総料理長 森田 俊一さん、店舗責任者の畑中 満さんにお話を聞きました。
11周年、おめでとうございます。ダイニング&バルのご紹介にあたり、改めて開設に至った経緯をお聞かせください。
飯塚)「わたす日本橋」誕生のきっかけは、2011年に発生した東日本大震災の出会いです。弊社にはプライベートで、甚大な被害を受けた南三陸町にボランティアで訪れている社員がおりました。その活動が社内で広まり社員研修が実現し複数の仲間が東北へ訪れるようになり、2014年にプロジェクトチームが立ち上がったというのが流れです。
「わたす」という言葉をネーミングに用いたのは、「“橋渡し”をしていきたい」という思いからです。「心の架け橋」「人と人の橋渡し」「人と未来に心の架け橋」「東北の想いや恵みを伝える橋渡し」。わたすが位置するここ、日本橋から様々な橋をかけて行けるよう努めています。
有松)この11年「わたす日本橋」は東北の魅力を伝える場として、企画や催し、現地との交流など、様々な取り組みを行ってきました。開設以来一貫しているのは、支援というスタンスではなく、フラットな関係で相互交流を大切にしていること。なぜなら被災地を訪ねるたびに、人々の温かさや強さに触れ、心が救われたことが原体験というか、そういったところから「わたす日本橋」はスタートしているからです。初期のメンバーから受け継がれてきた「押し付けがましくしない活動」を心がけています。
「わたす日本橋」は空間も印象的ですね。間口に対して、とても深い奥行き。初めて来られた方は驚かれるのでは?
店舗責任者 畑中さん
畑中)昔の町屋のような設計で、モダンかつ懐かしい雰囲気を演出しています。内装に使っている木材は南三陸杉。非常に密な木目と丈夫さを特徴とする宮城のブランド杉です。壁もカウンターも、テーブルも椅子も南三陸杉です。
[左上]エントランス入ってすぐの「わたすマーケット&ギャラリー」 [右上]右サイドはスタッフが東北で出会った逸品を紹介するマーケット
[左下]左サイドは様々な東北発進の情報に触れられるギャラリー [右下]奥へ奥へと入っていく設計で全70席と個室もある「わたす ダイニング&バル」
「わたす ダイニング&バル」はランチとディナーの間はカフェタイムになって、フル稼働ですね。メニューも豊富で。
初代総料理長 梁島さん
梁島)メニューはすべて、東北をはじめとする各地の生産者さんとの出会いから生まれたものです。私は立ち上げ当初、料理長として厨房におりました。東北出身でもない自分がやっていいのだろうか…。不安からのスタートでしたが、現地に赴き、生産者さんと連携を取りながらスタッフとともにメニューが出来上がっていく喜びは格別でした。
[左]梁島さん考案の「焼きチーズリゾット
海苔のクリームソース」。野菜出汁で炊いたリゾットの中にチーズを入れて表面をこんがりと焼き付け、クリームソースをかけて完成。トッピングには宮城産の海苔をたっぷり。磯の香りが立ち上がります。[右上]山形県庄内
鰆のロティ [右下]山形県チェリーバレー種 最上鴨のグリエ
パリや南仏での修業後、都内ホテル・有名レストランでシェフを務めてきた現総料理長 森田さん
森田)「焼きチーズリゾット」は、今なお不動の人気の一品です。チーズとクリームですから、しっかりした味わいです。それでいてリゾットが和風ベースなので後味はさっぱり。酒席の〆にもよく合います。私も就任以来、こういった和のテイストが隠れた料理を提供していきたいと思って試行錯誤しています。長年フランス料理をやってきたので、お皿の上ではフレンチのように表現して、食べるとThe日本、The東北を感じるような。生産者さんとのやり取りを大事にして、食材の良さを活かし調理でどう「わたす日本橋」らしさを伝えていくか。日々、楽しく悩みながらやっています。
とある日の「東北の彩り恵み コース」[左上]伊豆沼農園産生ハム / キャレドブール/ キャビア/サワークリーム
[右上]大根のラメル/みやぎサーモン/すだちの泡 [左下]宮城県奥松島 鳴瀬牡蠣 ロワイヤル カプチーノ仕立て [右下]五つ星 黒毛 和牛 のグリル
畑中)ディナーで東北の美味を存分にお楽しみいただけるのが、森田シェフ渾身のコースメニューです。季節に応じて食材を変え、盛り付けはフランス料理のごとく
(笑)。ぜひ、味わっていただきたいですね。ビジネス会食にも好評です。
ディナーのお話を先に伺いましたが、「まずはカジュアルに」という方に向けて、ランチのご紹介もお願いします。
生産者さんと共に生み出す「わたす」のランチ。宮城県のブランド銀鮭「南三陸サーモン」が入った海鮮丼や、漢方合挽肉を使ったハンバーグ、志津川産水蛸のパスタなど、リピーターの多さ納得のラインナップ。南三陸サーモンは水揚げの時に「活け締め」「神経締め」と呼ばれる処理が施されるため鮮度抜群で、とろけるような食感と甘い食味が特徴。
畑中)ランチの内容は3週間に1度のペースで変えています。オフィス街という場所柄、週に何度も来てくださるお客様も多いからです。大きく分けると海鮮丼やお刺身の盛り合わせなどの鮮魚系とお肉系の定食、他にパスタとサンドウィッチをご用意しています。全て生産者さんとの交流から生まれた「わたす日本橋らしさ」全開のメニューです。
森田)料理人としては、新鮮な良い食材を使えることも喜びです。食材が良くないと、どんなに手を加えてもそれ以上にはなりません。漁協のみなさんが「生で食べて欲しい」と話す「南三陸サーモン」は、焼いてしまうのがもったいないほどの鮮度です。
今日はありがとうございました。最後に今後の展望をお聞きかせください。
畑中)生産者さんの思いに寄り添って、信頼関係が築けた生産者さんが、別の生産者さんを紹介してくださる。そんな連鎖で東北のご縁がその他の地域にも広がっている「わたす日本橋」です。能登半島から届く食材も、多くのお客様を笑顔にしています。ぜひ一人でも多くの方にお運び頂ければ幸いです。