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割烹 日本橋とよだ
5代目
橋本亨さん

おそばの名店の多い日本橋の中でもファンの多い『利久庵』の三代目ご主人であり、地域の活動にも積極的に参加されていらっしゃいます。

利久庵
三代目
水谷弘さん

週末ともなると観光客でにぎわう日本橋は、大手企業が本社を構えるオフィス街でもあります。むろまち小路にある老舗のそば処「利久庵」は昭和の高度経済成長期から平成の現在に至るまで、日本橋で働く人たちのおなかを満たしてきました。三重から上京した祖父と父の兄弟5人でともに開いたこの店を引き継ぐ水谷弘さんは、物腰のやわらかな三代目店主。生まれ育った日本橋のことやお店で大切にしていることなど、丁寧にお話してくださいました。

ご近所は持ちつ持たれつ。
地域のみなさんに育ててもらいました。

ー小さいころの日本橋の暮らしはどうでしたか?

日本橋で生まれ、結婚して独立するまでは親と一緒に店の上に住んでいました。

私はひとりっこで、両親とも店で働いていたので、近所の料理屋さんやお寿司屋さんに遊びに行っては、ごはんを食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり。この地域に育ててもらったようなものですね。
それから、従業員の自転車の後ろに乗って出前先についていきました。当時はセキュリティなんてないから、三井の本館や東レビルなど、出前先まで一緒に入っていきました(笑)。
店の表から出入りしていたので、今でもときどき古い常連さんに「ランドセル背負ってた姿、見てたよ」なんて言われることがあります。店が生活の場だったこともあって、そのころから、子ども心に「継がなきゃいけないんだろうなあ」と思っていました。

※先代と一緒に。

ー修業時代について教えていただけますか。

大学を卒業し、横浜の日本料理店にお世話になりました。日本橋を離れるのはそのときが初めてでした。最初から料理なんてできませんから、まずは魚の名前を一から教わりました。修業期間は3年間。一番下っ端として働くことで家業では学べない経験ができたと思っています。

ー室町一丁目町会の活動にも積極的だと伺いました。

修業から戻ってきて2年ぐらい経ってから室町一丁目の町会の青年部に誘われました。最初はそれほど力を入れていませんでしたが、飲み会をやったりしながら仲良くなって、徐々に活動もしっかりやろうと思うようになりました。その後、2年前に引き継ぐまで青年部の部長を8年間やっちゃいましたね。

このあたりは路地も残っていて、住んでいる人もけっこう多い地域なので町会活動も活発なんです。活動のメインはお祭り。青年部では餅つき大会や縁日、盆踊り大会など、子どもたちが喜ぶイベントを多く実施しています。最近は近隣の会社が積極的に参加してくれるようになりました。もちろん、三越、山本海苔店、文明堂など大御所が率先して手伝ってくれるのがうれしいですね。

ー「利久庵」について教えてください。

そばは創業以来、更科のみ。そばの実を石臼で挽くと、胚乳と言われる真ん中の柔らかい部分が最初に出てきます。その御前粉ごぜんこ(一番粉より白い)で打ったのが更科そばです。うちでは北海道産のそば粉を使っていて、のどごしの良さが持ち味です。つゆはやや甘めで、看板メニューの「納豆そば」にもよく合います。

今でこそ人気の「納豆そば」ですが、実は、出し始めた40年前は邪道と言われたこともあったようです。それが徐々に口コミで広がっていき、さらに、そばや納豆が健康に良いということもわかってきて、看板メニューと呼ばれるようになりました。

大正生まれで現在93歳の父もまだ少しですがお店に出ています。あまり混雑しない時間帯に帳場に座っていますよ。お客さんにも「まだ元気か?」とよく聞かれます(笑)。

長年続いてきたことには必ず意味がある。
そば屋だけに“細く、長く”続けていきます。

ー仕事で大切に思っていることはなんですか。

それは「変えないこと」だと思います。
修業から帰ってきた当初は、あれこれ変えようと思っていました。でも、店で働くうちに、長年続いてきたことには意味があることがわかりました。そば屋だけに「細く、長く」続けること。頑張りすぎると疲れちゃいますから(笑)。

そばの業界を見ていると、どんどんなくなってしまったものがあります。漆塗りのせいろを使っている店も少なくなってきました。

昔は「もり」と「ざる」では、つゆも違っていました。気がつけば周りはみんな同じつゆを使うようになっていました。うちは今も昔のままで、ざるのつゆはちょっと濃くしています。

通し言葉もそうです。そば屋ではお客さまから注文を受けると、独特の通し言葉を使って口頭で調理場に伝えていました。たとえば、「もり1、ざる2」だったら、「もりつき、さんまいざる」と通します。「もり2、ざる3」だったら「もりまじり、ごまいのざる」というふうに。

もりならこのせいろ、かけならこのどんぶり、と全部決まっているので、耳で聞いて、調理場ではどんどん器を置いていきます。最初はわからなくても、慣れてしまえばこのほうが断然早い。うちでも注文と連動するポスレジを入れてはいるんですが、通し言葉のほうが便利なので、レジはあえて使っていないんです(笑)。

日本はこれまで欧米化を目指して新しいものをどんどん取り入れてきましたが、最近になって残していこうという動きが出てきましたよね。残そうというよりも、変えなくていいものは変えなくていいと思っています。

※2階の定食メニューがいただけるゆったりとしたソファ席(左)、ふわふわで食べ応えのある出し巻き玉子(右)

ーお店を継いでくれる四代目候補はいらっしゃいますか?

高校生の娘と、まだ小さいですが、5歳の息子に期待しています。保育園が終わったら店に来て、夕飯を食べたり、遊んだり、親や従業員が働いている姿を見ながら、なんとなく店の雰囲気を見せているところです。

たまにそばを食べさせて味を覚えてもらい、店に少しずつ馴染ませて、「そんなに大変じゃないよ〜」と感じてもらっているところです(笑)。継いでくれたらいいなと思っています。

ーお休みはどんなふうに過ごしていますか?

2、3年前までは町会のチームでソフトボールの試合に出たりしていましたが、最近はメンバーがそろわなくて大会に出られないので残念です。あとは三四四会や町会のメンバーと飲みに出かけたりしています。

下の子がまだ小さいので、体操教室に連れて行ったり、家族と一緒に過ごしたりする時間が多いですね。

※この情報は2018年12月現在のものです。