三井のオフィスの取り組み COLORFUL WORK PROJECT 三井不動産
吉野鮨本店
五代目
吉野 正敏さん

大変勉強熱心な日本橋そして日本を代表する料理の鉄人、これからの日本橋を支え、牽引する日本橋「ゆかり」三代目です。

日本橋ゆかり
三代目
野永喜三夫さん

にぎやかな看板が連なる飲食店街で、ここだけ空気ががらりと変わります。緑とコンクリートと石畳が調和した和モダンな前庭、看板はあえて小さく店名のみ。本格懐石料理の「日本橋ゆかり」。来店したことはなくとも、店主の顔にピンとくる人は多いはず。料理人ブームを巻き起こしたテレビ番組「料理の鉄人」のジャパンカップ2002で総合優勝し、翌年にはニューヨークタイムズ紙で「日本の若手料理人5人」に選ばれています。日本橋はもとより、日本を代表する料理人、三代目の野永喜三夫さんにお話を伺いました。

新しい和食の可能性を追求していく。
大事なのは “ストーリー”をつくること

ー小さいころは、どんなお子さんでしたか?

物心ついたときから板前になろうと決めていました。幼稚園のときから卒園アルバムに「板前になる!」って書いてましたよ。料理も、食べることも好き。好奇心旺盛で活発な少年だったかな。

親がうまいこと仕込んだところもあると思いますよ。お台場に釣りに行って、ハゼが釣れたら、自分でおろして天ぷらにしちゃう。そんなことを小学生のときからやっていました。料理人である父親や祖父の背中を見て育ってますからね。うちは自宅がちょっと離れていたけど、店が遊び場でした。日本橋には代々、家族ぐるみで仕事している老舗がたくさんあったから、同じように店で遊んでた子どもたちは多かったですね。

そんなふうに日本橋で育った僕らは、小さいころからサービス業とはどういうものなのか身についていて、家業を継ぐのが当たり前という感じでした。うちは年子の男兄弟。弟も独立して店をやっています。

ー京都で修業されたと伺いました。

調理師専門学校を卒業してから、父親の勧めで京都の「露庵 菊乃井」に入店しました。同じカウンター割烹で、店主の村田吉弘も三代目。年齢はちょうど20歳違う。目の前に20歳年上の、世界をリードする和食の料理人がいる。そんな環境で菊乃井の素晴らしいセンスを吸収しました。とにかく、がむしゃらに修業したことで、いまがあると思っています。

師匠に一番弟子として認めてもらい、菊乃井が東京に進出するときには裏方をやらせてもらいました。家業を継いでからも、ミラノ万博のときにもチームジャパンとして連れていってもらったり、いまだに声をかけてもらえるのはありがたいことです。

ー「日本橋ゆかり」の料理について特長を教えてください。

※五感で楽しめる贅沢ランチ「ゆかり御膳」

僕の料理のテーマは「温故知新」。いま、インバウンドで日本を訪れる外国の人たちは和食にとても興味を持っていますよね。これまでの「日本料理とはこういうもの」という古い思い込みをなくし、「ニュー和食」として発信しています。これには、食べやすい新しい和食としての“NEW和食”、そして、乳製品を入れた新しい和食ということで“乳和食”という2つの意味を込めています。

それから、東京の食材をもっと広めていく活動もしています。実は、東京は食材が豊富なんです。素晴らしい生産者がいて、素晴らしい食材があるのに残念ながらあまり知られていない。

※店舗か取り寄せでしか手に入らない「江戸っぷりん」と東京モッツァレラ茶碗蒸し

店の名物メニューにも東京食材を使っています。お通しのモッツァレラチーズの茶碗蒸しには東京産のモッツァレラチーズを使い、デザートの「江戸っぷりん」はライスプディングですが、砂糖以外の材料である卵、牛乳、コメはすべて東京産なんです。

東京の食材で誰もが好きな茶碗蒸しやプリンを作り、商品化することで話題となり、知られるようになる。「江戸っぷりん」のパッケージは僕がデザインしたんですが、東京の地図を描き、生産者を紹介しています。長々とうんちくを書くよりも、五感に訴えたほうが格段に伝わりやすいんです。僕は料理を作るだけでなく、総合的にプロデュースすることをいつも考えています。東京の食材を東京の料理人が料理に仕立て東京から発信する。そんなふうにストーリーで伝えていくことが大事だと思っています。

これまでコツコツやってきたことが、東京マイスターや日本食を指導する日本食親善大使に任命されるなど、やっと世の中に認められてきています。

“個”ではなく団結してみんなで発信していく。
今後も様々なコラボレーションを発信

ー日本橋の横のつながりについて教えてください。

みんな日本橋という町でともに育った仲間なので、仲がいいしチームワークがいい。特に三四四会のメンバーは年齢が近いし、毎週のように集まっていますよ。老舗とはいえ、自分の店だけでできることは限られています。個ではできないことでも、町会や三四四会で団結することで活動しやすくなる。みんな個性が強いですが、それぞれの得意分野を生かして仕事を分担していろんな発信をしています。

9月27日に新しく完成する「日本橋室町三井タワー」で、日本橋の老舗料理店が参加してロカボメニューのコラボレーションを行う予定です。

ー多忙を極める野永さんですが、プライベートはどのように過ごしていますか?

子どものころから「釣り」が趣味。無心になれるのが好きで時間があったらなるべく出かけるようにしています。狙いはブラックバスだったり、船を持っているので逗子ほうでトローリングしたりね。最近はなかなか時間がないので行けないのが残念ですね。

※(左)こだわりの1階カウンター席、(右)地下のゆったりとした座敷のテーブル席
※この情報は2019年8月現在のものです。